なぜ、話すより理解するほうが簡単なのでしょうか?

次の単語を目にしたと想像してみてください。

appointment(予約)

単語そのものは、すでに目の前にあります。前後の文もヒントを与えてくれます。単語の見た目に見覚えがあったり、以前どこで見たかを思い出したり、文脈から意味を推測したりできます。

では、次のように聞かれたと想像してみてください。

When are you seeing the dentist?(歯医者に行くのはいつですか?)

こう答えたいとします。

I have an appointment on Friday.(金曜日に予約があります。)

今回は、appointmentという単語を誰も提示してくれません。自分で思い出す必要があります。

この違いが重要です。

語学学習では、この違いをよく受動語彙と能動語彙の違いと呼びます。研究では、受容的知識と産出的知識という用語も使われます。

わかりやすく言うと、次のような違いです。

  • 認識:「見たり聞いたりすれば、意味がわかります。」
  • 想起:「見せてもらわなくても、思い出せます。」
  • 使用:「実際に必要なときに、その言葉を選んで表現できます。」

同じ単語でも、ある力は十分に身についていて、別の力はまだ弱いことがあります。

そのため、かなり高度な文章を読めるのに、会話では比較的簡単なことを伝えるのにも苦労する場合があるのです。

関心を持てる内容から学び始めましょう

読むことや聞くことをやめて、確認テストばかりに時間を使うのが解決策ではありません。

まずは、練習の材料になる言葉に触れる必要があります。

読んだり、聞いたり、見たりすることで、意味のある場面の中で語彙やフレーズ、文法、よく使われるパターンに出会えます。しかも、内容に本当に関心があるほど、学習に役立ちます。

専門的な記事や物語、興味のある分野の動画、本当に理解したい会話なら、一般的な単語リストでは難しいほど、集中して取り組めることがあります。

これが大切なのは、なじみのある語彙になるには、たいてい一度の出会いだけでは足りないからです。

最初は、意味を十分に理解しないまま、あるフレーズが目に留まることもあります。次に出会ったときは、前後の文から意味がよりはっきりします。さらに別の場面で耳にして、使い方がわかり始めます。

たとえば、次の表現を見てみましょう。

It turns out that…(…だとわかりました)

一つの例から、おおよその意味がつかめます。

It turns out that I was wrong.(間違っていたことがわかりました。)

別の例に出会うと、表現のパターンがさらに明確になります。

It turns out that the restaurant is closed.(レストランが閉まっていることがわかりました。)

It turned out to be much easier than expected.(やってみると、予想よりずっと簡単でした。)

ここでは、単に訳を覚える以上のことを学んでいます。その表現がどのように使われるのか、理解し始めているのです。

インプットは、こうした知識を育てます。

ただし、注意点があります。表現を見聞きしてわかる力が大きく伸びても、自分で使う力が同じように伸びるとは限りません。

どこかの段階で、認識から想起へと進む必要があります。

ときには、答えを見る前に思い出してみましょう

単語やフレーズを思い出しやすくしたいなら、ときどき自分で思い出す機会を作ってみましょう。

たとえば、次のように単語から意味を確認する代わりに、

appointment → 誰かと会うためにあらかじめ決めた日時

意味や状況から始めます。

金曜日に歯医者で何の予定がありますか?

そして、次の言葉を思い出してみます。

an appointment(予約)

次の文も、すぐに読み返す代わりに、

I'm looking forward to seeing you.(お会いできるのを楽しみにしています。)

こんな問いから始めてみます。

これから誰かに会うのを楽しみにしているとき、どう言えばよいでしょうか?

そして、次の表現を記憶から取り出してみます。

I'm looking forward to seeing you.(お会いできるのを楽しみにしています。)

これが想起練習です。答えをすぐに見るのではなく、記憶から情報を取り出そうとする練習です。

読み返すよりも難しく感じることがよくあります。

その難しさには意味があります。

見ればすぐにわかる表現を思い出すのに苦労したなら、そこにこそ、練習で埋めたい差があります。

伸ばしたい力に合わせて練習しましょう

単語の意味を理解することが目標なら、見聞きして意味を確認する練習が役立ちます。

その単語を口に出すことが目標なら、ときには逆方向の練習も必要です。

たとえば、

学習中の言語 → 意味

という方向では、主に認識の練習をしています。

一方で、

意味や状況 → 学習中の言語

という方向では、自分で言葉を組み立てて表現する必要があります。

ヒントは、少しずつ減らしていけます。

意味 → 単語

誰かと会うためにあらかじめ決めた日時を、英語で何といいますか?

状況 → フレーズ

来週の休暇が楽しみです。どんな表現で伝えられるでしょうか?

問いかけ → 文

What are you doing Friday afternoon?(金曜日の午後は何をする予定ですか?)

会話 → とっさの使用

I have an appointment, so I'll be free afterwards.(予約があるので、その後なら空いています。)

段階が進むごとに、求められる力が少しずつ増えます。

そうすることで、練習が実際に話すときの状況に近づいていきます。

語彙を、さまざまなものと結びつけましょう

単語を記憶するとき、次のような結びつきだけに限る必要はありません。

外国語の単語 ↔ 訳

より豊かな結びつきがあると、理解しやすく、覚えやすくなることがあります。

たとえば、単語を次のようなものと結びつけられます。

  • 最初にその単語に気づいた文
  • 声や発音
  • 画像
  • 特定の場所
  • 状況
  • 自分の体験

自分のアパートを説明しながら、balcony(バルコニー)という単語を覚える場面を想像してみてください。

電車や飛行機の遅れを経験したあとで、delayed(遅れている)を覚えることもあるでしょう。

人の多い街で撮った写真をきっかけに、crowded(混雑している)を保存することもあるでしょう。

こうした結びつきがあっても、会話で何の苦労もなく単語が出てくるとは限りません。ただ、辞書の項目を単独で覚えるよりも、言葉に豊かな意味を持たせられます。

すべての単語に、凝った記憶術を用意する必要はありません。

単語によっては、シンプルな訳だけで十分です。

でも、自分にとって大切な単語やフレーズは、文脈と結びつけることで知識が深まり、あとで思い出しやすくなります。

単語と一緒に、その周りの表現も学びましょう

文脈からは、訳だけではわからないことも学べます。

たとえば、次の単語を考えてみましょう。

decision(決断)

意味を知っているだけでも役立ちます。

次のような表現も知っていれば、さらに役立ちます。

make a decision(決断する)
a difficult decision(難しい決断)
I've decided to…(…することに決めました)

同じように、

depend(…による、依存する)

という単語だけを覚えるよりも、次の表現に出会うほうが、すぐに使える言葉が増えます。

It depends on…(…次第です)

だからこそ、個々の単語だけでなく、フレーズやコロケーション(よく使われる単語の組み合わせ)、繰り返し登場する文のパターンにも注目する価値があります。

話すとき、いつも一語ずつ文を組み立てているわけではありません。なじみのある組み合わせがあれば、言葉をまとまりとして使えます。

役立ちそうな表現を見つけたら、次のことだけでなく、

これはどういう意味でしょうか?

こちらも考えてみるとよいでしょう。

実際には、どんなふうに使えるでしょうか?

音声から、単語の新しい側面がわかります

文字で単語を知っていることは、話し言葉を身につけるための一部にすぎません。

文字で見ればすぐにわかる単語でも、誰かが自然に話すと理解できないことがあります。

単語やフレーズを耳にすると、発音、アクセント、リズム、単語同士の音のつながりについても情報が得られます。

たとえば、次のような表現です。

What are you up to?(何をしていますか?)

文字で見ると、簡単に思えるかもしれません。

でも、実際の会話では、予想していなかった形で単語の音がつながることがあります。

リスニングは、文字の形と、実際に耳にする言葉を結びつける助けになります。

さらに、自分で声に出すことで、また別の練習ができます。

こうした違いがあるからこそ、役立つ語彙を最初に出会った場所だけにとどめず、さまざまな活動で扱うことに意味があります。

大切な表現は、間隔を空けて繰り返し復習しましょう

一度思い出せたからといって、数週間後も簡単に思い出せるとは限りません。

役立つ言葉には、繰り返し出会う必要があります。

ただし、毎日すべてを復習するという意味ではありません。

まだ難しい単語やフレーズは早めに、よく覚えているものは少し間隔を空けて復習できます。復習を時間的に分散させると、まだ練習が必要な部分に集中しやすくなります。

でも、復習ではタイミングだけが大切なのではありません。

毎回、単語と意味を見るだけなら、見聞きしてわかる力はどんどん伸びるかもしれません。

ときには自分で表現を思い出す復習を取り入れると、必要な言葉を記憶から取り出す力も鍛えられます。

たとえば、次のような流れが役立ちます。

出会い → 理解 → 想起 → 再度の出会い → 使用

語彙の練習から、実際の使用へ

やがて、単語やフレーズは練習の外でも使う必要があります。

たとえば、次の表現を学んでいるとします。

I'd rather…(どちらかといえば…したいです)

最初は、こんな文を読んでいるときに気づくかもしれません。

I'd rather stay home tonight.(今夜は、できれば家にいたいです。)

その後、練習で次のように問いかけられます。

別の選択肢を選びたいとき、どうすれば丁寧に伝えられるでしょうか?

そこで、次の表現を思い出します。

I'd rather…(どちらかといえば…したいです)

次に、自分で例文を作ります。

I'd rather go tomorrow.(できれば明日行きたいです。)
I'd rather not discuss it now.(できれば今は、その話はしたくありません。)

そして、やがて会話でも使います。

Do you want to take the train or drive?(電車で行きますか?それとも車で行きますか?)

I'd rather take the train.(できれば電車で行きたいです。)

この最後の移行が大切なのは、会話ではフラッシュカードとは違う力が求められるからです。

相手の言葉を理解し、伝えたいことを決め、適切な表現を見つけ、やり取りを続けられる速さで言葉にする必要があります。

語彙の練習だけで、こうしたことをすべて再現することはできません。

復習は言葉を使うための準備になりますが、実際に使うことも、言葉を使えるようになるための学習の一部なのです。

すらすら思い出せるまで待つ必要はありません

毎回完璧に思い出せるようになるまで、単語は復習し続けるべきだと思うことがあります。

でも、実際に語彙が身につく過程は、それほど整然としたものではありません。

たとえば、単語について次のような状態が考えられます。

  • 見聞きすれば、すぐにわかります。
  • 数秒考えると思い出せます。
  • 書くときは簡単に思い出せても、話すときは難しく感じます。
  • ある表現の中ではよくわかっても、別の表現ではわからないことがあります。
  • 会話で聞けばわかっても、とっさに自分から使うことはほとんどありません。

これは、すべての単語が順番に通過する、きれいに分かれた段階とは限りません。

言葉を知っているということの、さまざまな側面です。

実際の学習で考えるべきことは、シンプルです。

どの部分が弱いのでしょうか?

すでに見聞きしてすぐにわかるなら、認識の練習を増やすことが必要とは限りません。

今度は、答えを見ずに思い出してみましょう。

練習では思い出せるのに、話すときにまったく使わないなら、その言葉が必要になる場面を作ってみましょう。

口に出せても、自然な会話の中で聞いて理解するのが難しいなら、もっとさまざまな文脈でその言葉を聞いてみましょう。

Vocafyでの学習とのつながり

Vocafyは、語彙との出会いを学習の終わりにしない、という考え方をもとに設計されています。

興味のあるものを読んだり、聞いたり、見たりする中で、役立つ単語やフレーズに初めて出会うことがあります。すぐに単語と訳だけの組み合わせにするのではなく、出会ったときの文脈と一緒に保存できます。

その文脈には、元の文や音声、画像、その表現の意味が実感できた場面などを含められます。

その後、同じ単語やフレーズに、復習や想起練習で再び出会えます。

さらに、発音練習やライティング、会話など、見聞きしてわかるだけでは終わらない活動につなげられます。

記事で見つけたフレーズを、いつまでもその記事の中にとどめておく必要はありません。何度も出会い、やがて自分でも使ってみる言葉にしていけます。

出会ったものをすべてフラッシュカードにすることが目的ではありません。

学習のそれぞれの段階を、もっとつなげやすくすることが目的です。

理解 → 気づき → 記憶 → 想起 → 使用

きっと、話せる以上の言葉を知っています

理解力に比べて話す力がずっと遅れていると感じても、それまで読んだり聞いたりしてきたことが無駄だったわけではありません。

むしろ、その逆です。

話すときに土台となる知識は、すでに育っています。

ただ、見聞きしてわかることは、学習の一部にすぎません。

必要なときに使える言葉を増やすには、ときどき答えを見ずに思い出す練習をしてみましょう。役立つ単語は、文や音声、画像、状況と結びつけておくと効果的です。単語だけでなくフレーズも学び、大切な表現は間隔を空けて繰り返し復習しましょう。書くときにも、話すときにも使ってみてください。自分で言葉を選ばなければならない場面で使うことも大切です。

わかる単語をすべて、毎日使うようにすることが目標ではありません。

目指すのは、自分にとって大切な言葉を、少しずつ伝えたいことがあるときに取り出して使える状態にしていくことです。